香港の騒動と金価格

 コモディティーインテリジェンスの情報の読者から、「香港の騒動は金価格に影響ありますか」という質問を受けた。

 香港が揺れている。700万人の人口しかいない国で、100万人近い人々が路上を行進する姿は、相当なことであろう。筆者は天安門事件があった頃、30年以上前だが、6年ほど香港に駐在したことがある。家族共々とてもおいしい中華料理を食べ、子供たちはリトルリーグに入って日本人、米国人、中国人と毎週末野球を戦い、休暇は東南アジアのクラブメッドで過ごすという、楽しかった思い出の地である。

 当時は英国の治世下で人々は自由を謳歌していた。健康保険や失業保険はないが、香港は今や日本を抜いて世界一の長寿国である。人々は太極拳をするなど日頃から健康に気を使っている。また、駐在中に所得税が最大18%から最大16%に下がった。税金を下げてもいいのかと香港政庁の人に聞いたら、税金を下げれば下げるほど税収は増えるとおっしゃった。そんなものかと驚いたことを記憶している。

 フェロシリコンを買いに行ったり、半導体を売りに行ったりしょっちゅう中国に出入りしていたが、その格差はたいへんなものであり、当時は中国経済が日本や米国に追いつくとは考えられなかった。中国から戻るとき深圳の国境を渡って香港領に入ると、ほっとしたものだ。

 香港の人々は香港ドルを貯めるという感覚はなく、お金を貯めるというのは金(ゴールド)を貯めることであった。部下の香港人は給料をもらうと銀行に行って金塊に変えていた。周大福などの貴金属商に行くまでもなく、町の銀行の窓口で金が買える。

 現在中国は、金地金を主にスイスと香港から輸入しているが、この8月は香港からの金の輸入量はめっきり少なくなった。その一方で、豪州とシンガポール、マレイシアの香港向け金輸出は急増している。つまり、香港市民が金を買い漁っている。香港の今回の騒動で、金が香港に集まるという現象が起きているが、世界の金価格を動かす要因とまではいかないと思う。何はともあれ、早く香港が平和な街に戻ってほしい。

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