マクロ経済の動きと商品価格⑥

 米中貿易摩擦はトランプ大統領一流のブラッフかと思っていたら、5月10日に2000億ドルの追加関税を実行し、13日には6月末までに残り3000億ドルの中国製品すべてに追加関税をかけることとなった。その背景には、

① 次世代通信技術の5Gを巡る主導権争いと米国の先端技術の保全及び
  技術拡散防止
② 一帯一路や、中国製造2025による中国企業の世界進出の抑制

といった中国政府に大きな支援を受けた中国企業の躍進を阻む意図があるとともに、来年の大統領選に向けた選挙活動の一環という側面がある。

 後者のシナリオについては、トランプ大統領は一定の成果を得ているようである。4月末に行われたギャラップによる世論調査ではトランプ大統領の支持率は過去最高の46%となり、3月下旬の39%から大きく上昇している。また共和党議員と共に、民主党議員も中国に対するトランプ政策を支持しているようだ。

 最初は奇抜な政策に驚愕して無意識に反発していた市民も、その方策に慣れてくると政策を再評価し始めている。冷静な分析によれば米国にとって25%の関税は、中国製品の値上がりを意味し、中国以外で作れるものは代替国へのソース転換を行えば良い。一方中国のメーカーは、米国の買い手から値下げを要求され、ある程度受け入れざるを得ない立場にある。売り手は常に買い手より弱いものである。そのため、米国市民が25%の関税を丸々負担することは無さそうで物価が上昇する可能性はない。

 一方こうした情勢が中国経済に大きな影響を及ぼすのかと思って本日の株式会社コモディティーインテリジェンスの『週刊経済指標』で中国経済を調べてみたが、少なくとも、5月連休前の中国経済は、一時の景気低迷を脱しつつある段階であったようだ。先行きの中国の経済展望は明るいという見通しであった。ただその後起きている関税摩擦がどの程度中国経済に影響を及ぼすかは、今後の問題である。

 直感で判断すると、世界景気はこの関税の賦課により悪化すると思いがちであるが、あながちそうとも言い切れないのかもしれない。ただ、各国の企業経営者は先行き不透明として投資マインドをしまい込んでおり、それを察した株価が世界的に下落している。いずれ実態経済への政治の影響が数字となって現れてくるだろうが、取り敢えずは心理的に世界は内向きとなっている。そう下雰囲気が金価格を上げて、原油や農産物価格を下げている。

 常識的に考えれば、両国は戦争するわけではなく、どこかで折り合うのであろう。ただ、中国は、安易に妥協すれば国内の反政権勢力から不満の声が上がるだろう。一党独裁は、うまく行っている時は効率的であるが、うまく行かなくなると、独裁者は自己の保身を優先した政策を採りがちで、それは得てして内に優しく外に厳しい政策を採りがちである。外国と戦うことによって国内を結束させるのは独裁国家の常套手段である。

 そうなると常識というものが実は政治の世界では常識ではないことになる。常識的にはいずれ両国は落としどころを探って妥協し、それによって下がっていた株価は反発し、上がった金価格は下がり、下がった原油価格は上がると予想できる。しかし、常識外れであれば、まだまだ恐怖指数は上昇し、金価格は上がり、原油や農産物価格は下がるのかもしれない。その判断は時々刻々と変わって行くので、最新のニュースに敏感に反応する以外に手はない。
 

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