市場とは何か その29

 長年予測の作業に従事していると、波動の流れを体感することがある。卑近な例だが、今年の夏にテニス仲間でコーチの送別会を行った時、知り合いの公認会計士が財産をすべて米国株に切り替えたと発言した。買っても買っても上がるのだよと嬉しそうに述べていた。この時私は米国株の天井を体感した。株式取引所があるビルの靴磨きが滔々と株は上がると述べたので、売ったという例と同じである。今まで関与していなかった人々までが、株は上がると言い始めた時は相場の終焉である。2007年初めからサブプライム問題が徐々に顕在化し、NYダウ平均株価は2007年10月に14,199ドルの天井を付けてから下落した。2008年9月にはリーマンブラザーズが破綻した。NYダウ平均株価は、2009年3月6日6470ドルであった。その時の安値で米国株を買っていたら、2018年1月28日の26,516ドルを付けるまで、米国株は9年間右肩上がりで上がり続けたわけである。知人の公認会計士は値上がり中の9年目の最後の年に全財産を高値で買いつかんだことになる。

 原油価格が2008年7月に147ドルを付ける前、私はセミナーでこれは異常であると述べたが、多くの人には信じてもらえなかった。2016年2月に同じく原油価格が26ドルを付けた時に安過ぎると述べている。こうした異常な高値や安値は修正されやすいので、はっきりと今後価格は下がるとか上がるとか言うことができる。そうした時に耳を貸してくれる人は非常に少ない。多くの人は価格が上がっているときはもっと上がると思いたがる。そしてそれが当たる時もある。しかし、あまりにも常識外れの価格帯になれば反転することが多い。問題はどこの段階で反転するかがわからないことだ。2016年からの原油の上げ相場の時も価格は深い谷を造りながら上がっていくため少ない資金で先物投資をしているとその凹みの部分で資金をなくしてしまう。やはりウォーレンバフェットのように、ひとたび上がると思えば、少々の凹みは意に介さず、じっと耐え続けるだけの資力と気力が必要なのであろう。

 今思い出しても、過去10年以上で絶対にここは上がるとか下がると確信して思ったことは数度しかない。それ以外の時は一定のレンジの幅で価格は動いている。金価格などはその典型である。もっともリーマンショック後の金価格は例外であった。当時は米国金融業の崩壊から欧州の不動産業バブル崩壊による金融機関の経営悪化、それを支える欧州各国政府の財政悪化、加えてアラブの春による革命の連鎖など、世界史史上における大きな出来事が相次いで起きた。これは金価格にとってはまたとない機会であり、初めて1000ドルを超えた時である。こうした時のセミナーはやりやすかった。しかし最近の金価格はドルの逆相関という程度しか説明のしようがない。おそらく来年はドル安に転じるであろうから金高だと述べてはいるものの、それ程深い意味はない。

 結局一定のレンジ相場が長く続いて、トレンドが出るのは何年かに一度の稀有の事態であると言えよう。
 

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