市場後は何か その17

 『情報のマグニチュード』

 地政学的リスク等が市場に与えるインパクトを考える場合、その事象がどれだけの大きさで市場に影響するかについてそのマグニチュード(数値化された震度)を測る必要がある。つまり、言葉で読んだり、映像で見たりする情報は、事象の状況を知るものだが、市場に与える影響は、できるだけ数値化して分析しなければ、その状況が与えるインパクトがわからないということである。

 原油の場合日量100万バレルの変動となれば一つの大きなインパクトの単位となるが、数十万バレルの下の方なら影響は軽微である。シリアの原油生産量は、2002年に過去最大の日量67万バレルを生産したことがあるが、2017年は日量2万7千バレルである。過去最大の時でも、シリア国内の需要を賄うのが精いっぱいで、海外に輸出できるほどのものではなかった。従って、シリアでいくら内戦が激化しても、世界の原油需給には全く響いていない。

 もう一つの内戦国スーダンと南スーダンも、当初はスーダン全体で2007年に日量48万3千バレルを生産したことがあるが、内戦により南北に分裂したスーダンでは、2017年のスーダンと南スーダンの原油生産量はそれぞれ、日量8万6千バレルと日量10万8千バレルであるが、以前に比べて合計約20万バレルの減産になったからといって、世界の需給が変わるわけではない。また、両国は分裂して以来、生産量が半減している。

 現在米国の経済封鎖再開が11月4日に迫って問題となっているイランの原油生産を見てみよう。第一次オイルショック当時の1974年、イランは日量606万バレルの原油を生産していた。そして最近のオバマ政権による経済封鎖の頃の2013年には361万バレルまで生産量は減少していた。それが2017年の原油生産量は日量498万2千バレルとなっている。経済封鎖解除後に約+140万バレルほど急増している状況である。イランから原油を購入するインド、韓国、日本などはイランからの輸入量の削減を余儀なくされるだろう。中国はイラン産原油を買い支えるが、イランの原油生産量は11月以降再び300万バレル以下に減少すると思われる。日量約▲200万バレルほど減少するかもしれない。しかし、この分はサウジアラビアやロシア、米国などが生産を増加させて応えるものと思われる。どの国も原油価格が50ドル以上なら十分採算が合い、作れば作るほどもうかるが、作り過ぎて2016年のように原油価格が暴落することは怖いので、生産調整をしながら需要に合わせて増産するだろう。いずれにせよ、原油が足りなくなるというのは心理的な噂で、実際に供給不足で困るような事態にはならないと思われる。

 以上のようなデータは、毎年6月にBP社が発行するレポートにより世界各国の確認埋蔵量や生産量、消費量を得ることができる。

 まとめると、地政学的リスクというものは二つの側面から見るべきである。

 一つは現物需給に直接的な影響を与えるかどうかを数値的に把握し、そのマグニチュードを図って判断する。

 次いで、それはそれとして、心理的影響が市場にどの程度及ぼすかを判断する必要がある。これは数値化できないので、市場の状況や市場からの声をよく観察するしかない。数値化されたマグニチュードが低い場合は、心理的影響は一時的に終わり、長続きはしないことが多い。

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