市場とは何か その13

 今年3月、上海商品取引所に、長年の懸案だった中国人民元建て原油先物取引が上場された。アジアでは東京商品取引所や、ドバイ、インドのムンバイ等に原油は上場されているが、ロンドンのブレント原油や、ニューヨークのWTI原油のような実際の原油現物取引の価格形成に使われている市場はこれまでアジアにはなかった。しかし、わずか半年足らずで、中国の原油取引は中近東から輸入される原油や中国で生産する原油や石油製品価格など、中国を中心とした現物取引の価格指標として使われ始めている。世界最大の原油輸入国で、世界第8位の原油生産国である中国は、今後も石油取引の人民元建てへの移行を拡大する見通しで、北海ブレントと米WTIによる市場支配を揺るがしそうだ。

 7月の出来高は約280万枚(1枚=1,000バレル)で、
シェアはWTI56.7%、ブレント28.9%、上海14.4%に達した。
 

 
 本来の先物市場とは、このように戦略的な意図を持っている。中国は、原油価格を自国の市場で自らの手で決めようとし、また、原油の現物取引の価格をドル建てではなく人民元建てにしようという明確な方針を貫いている。そして、中国の石油企業は、その政府の方針を粛々と守っている。

 日本の商品先物取引は単なる投機の場である。市場参加者は価格が上がることにしか関心はない。原油価格が上がればガソリン価格も上がるため、個人投資家はインフレになって困るはずなのに、原油を買いたがる。2016年原油価格が30ドルになった時、真っ先に買い始めたのは原油ETFによる投資家であった。そのおかげで世界の産油国や石油企業は倒産を免れた。そして、リッター当たり110円台にいたガソリン価格は上昇し、日本の石油元売り企業も在庫の評価損から脱出できた。日本の石油企業は誰も日本の商品取引所を利用していない。市中のガソリン価格も東京商品取引所のガソリン価格とは連動していない。元売りが今月はこの値段ですという、いわゆる生産者価格が全国のガソリンステーションに配送されるガソリン価格の指標となっている。原油価格が下がれば、ガソリン価格も下がってはいるが、原油の値下がりほどには日本のガソリン価格は下がらず、原油価格が上がると原油価格の値上がり以上にガソリン価格は上がっていると思われる。誰もそれを検証したことはなく、新聞記者がそれを取り上げることもない。みな先物市場に関心がなく、無知であるからだ。

 下のチャートは東京商品取引所のガソリンと原油価格の動きとNY原油価格の動きであるが、ほぼ傾向は一致している。
 

 

 
 一方、資源エネルギー庁による全国レギュラーガソリン販売価格と東京商品取引所のガソリン価格や原油価格と比較したグラフが二番目のものであるが、東京商品取引所のガソリン価格とほぼ一致していた小売り価格は、東京商品取引所のガソリン価格の下落についていかず、かなり上方にシフトしていることがわかる。つまり、日本の石油元売り企業は、原油価格値下がりの差益を十分小売り価格に反映していなかったということであるが、このことは、資源エネルギー庁を初めとして、新聞各社も取り上げていない。

 先物取引の利用をしないということは、日本のガソリン生産者にとっては有利に働き、消費者は、いつの間にか原油価格下落の収益を還元されていなかったということになる。同様なことは、為替が円高になった時の輸入物価にも表れている。市場を理解しない、あるいは関心がないということは、知らず知らずの間に損を被っていることに気が付かないということである。

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