市場とは何か その10

 先物市場は、売りからも入ることができる。現物市場の株式市場で投資を行う人々には少し分かり難いかもしれない。現物市場でも空売りはできるが、文字通り物を持っていないのに売るから「空売り」という名がついているのであり、株式市場で売りから入りたければ、株式(現物)を借りてくるという行為が必要となる。これを信用取引と称し、証券会社は信用のあると思われる投資家から担保を取って手持ちの株式を貸し与え、それを売らせるという仕組みとなっている。

 一方先物市場の考え方は、契約形態であるので、現物を持っていなくても売ることができる。つまり売り契約をするのであり、物を今受け渡すのではない。将来に受け渡すという契約をするだけで、売ることができる。取引業者は、買いのお客と同様な額の担保となる証拠金を要求するが、これは契約を履行しますという契約保証金のようなものである。

 こうした先物取引は江戸時代の大阪で米問屋が帳合米取引として世界で最初に作った仕組みであるが、米問屋は秋に収穫されるであろう産地のコメを大名から今販売して利益を確定するという行為を委託されていた。この行為は、今や世界中の農産物を生産する生産者が利用し、ブラジルのコーヒー農園やオーストラリアの小麦生産者はニューヨークやシカゴの先物市場で、秋に収穫するはずの作物を最も高いと思われる価格が付いた時にその一部を売り契約している。

 さて、こうした先物価格は常に需要と供給の関係で価格が動いており、ニューヨーク市場での価格は現物に近い限月(受渡月)の価格が標準価格となるが、日本の市場では商慣習によりたとえば貴金属の場合は1年先物の価格が標準的な価格となっている。

 そして、現物価格と先物価格には直先差というスプレッドが存在し、常にそれは動いている。下の図は、米エネルギー情報局(EIA)による短期需給予測(Short Term Energy Outlook)の8月号に記載されてブレント原油価格直物と13ヵ月先物のスプレッドとWTI原油価格の同じスプレッドを対比したものである。2018年の7月初めには原油価格のスプレッドが大きく拡大していることが分かる。これは、米国のガソリン需要が旺盛で米国中西部における石油精製設備の稼働率が上がり、原油の投入量が増大し、ニューヨーク商品取引所で取引されているWest Texas Intermediate原油の受渡場所である、オクラホマ州クッシングの原油保管場所から多くの原油が引き出されて、直物すなわち現物の原油価格が上昇し、先物価格が割安となるバックワーデーションという現物高の先物安という現象が生じたことを表している。ロンドンで取引されているブレント原油価格はそれほど直先差のスプレッドが大きくないのは、それだけ、現物の供給が旺盛で需要に十分対処しているということを表している。

▼Short-Term Energy Outlook – Crude Oil
https://www.eia.gov/outlooks/steo/marketreview/crude.php

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