薄れ行く地政学的リスク

 最近の地政学的リスクが商品市場に効かないという状況がある。結論から言えば、地政学的リスクがどれも小粒だからである。ウォールストリートジャーナルに、オバマ大統領はプーチンロシア大統領を個人的な攻撃はしないという記事が載っていた。ウクライナ問題をずっと以前から観察してきた筆者も、オバマ大統領/メルケル首相/プーチン大統領の間には、頻繁に電話会議が開催され、意思の疎通は十分計られている背景があるという感を強く持っている。また米国軍隊の最高実務指導者であるデンプシー米統合参謀本部議長は非戦派であるという報道を目にした。ブッシュ政権下で、イラク戦争を指揮した同総司令官は、アメリカ人の若い兵隊がこれ以上海外で死んでいくのに耐えられなく思っていると評していた。ブッシュ親子が好戦派であるなら、オバマ政権は非戦政権であるだろう。また、ブッシュ時代に国家予算を使い尽くし、大きな財政赤字を残した後では、戦争をしたくとも出来ないお家の事情もあるものと思われる。そのため、シリアにしても、イラクにしても、ウクライナでも米軍は出動していない。ブッシュ政権なら全部に派兵して強圧で抑えこんでいたものをオバマ大統領は何とか話し合いで解決したいという厭戦主義があるのだと思われる。そうした大統領に共和党を初め弱腰だとの批判も聞かれるが、核軍縮を目指すオバマ大統領には一定の評価もあるようである。

 いずれにせよ、シリア、イラクに、イスラエルのガザ地区、ウクライナと騒動が起こっているが、それに対する商品価格の反応は鈍い。どれも原油の需給には関係無く、世界的な紛争への発展の可能性も少ない。世界のトップ通しの意思の疎通は円滑に行われている。

 中国の習近平国家主席も日本との会談を望んでいるようである。ミャンマーの首都ネピドーで8月10日に開くASEAN地域フォーラム(ARF)では、フィリピン政府が中国と領有権を争う南シナ海の問題を提起する。習近平国家主席は中国が四面楚歌になりそうであることを感じ取っているようだ。というより、こうした石油の試掘や領空侵犯等は、習主席の考えで起こされたことではなく、石油財閥や軍部の独走で行われたものという解釈もある。ようやく、中国共産党が前最高指導部の一員だった周永康氏を立件して、石油閥にメスを入れることができた。一説には、石油閥の長である江沢民元国家主席は7兆円に上る石油利権からの利得を得ているという。それだけの資金があれば権力そのものであり、周前中央委員会委員もカネの威力で権威を維持していたと言われる。中国石油天然気集団も、習主席を支持し、ようやく新世代の権力基盤ができつつあるように思われる。権力の統一が為されれば、中国も無理難題を言うような国ではないと思われる。こうして、金価格や石油価格を押し上げるような地政学的リスクは1つずつなくなってきた。もっとも、いついかなる危機が訪れるかは今後の問題であるが。

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