先週原油価格が上昇した

 先週原油価格が上昇した。いわゆる予期せぬ地政学的リスクの発生である。
 オバマ米大統領は、軍事予算を削減し、世界の国々から米軍を撤兵させてきた。アフガニスタンからの撤兵とイラクからの撤兵がオバマ大統領の二つのレガシー(遺産)になるはずだった。ところが、「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の軍隊が、イラク北部から進撃し、オバマ大統領がイラクに残してきたスンニー派のマリキ政権が支配する首都バクダッドから60km(注:東京~小田原間が70km)のバクハ郊外まで迫って激しい戦闘が続いている。
 
 このISISという組織は、ウサマ・ビン・ラディンの後継者アブ・パクル・バグダディーが率いるアルカイダ組織で、シリアとイラクにイスラム国家を樹立しようとする勢力である。この争いには、宗教戦争と民族戦争、及びイスラムの聖戦が含まれている。
 攻める側は、元フセインイラク大統領のスンニー派教徒であり、守るのはイランと同じシーア派である。また部族的には、北部のクルド人が北部石油利権をめぐって対立しているアラブ人を責める構図となっている。スンニー派は人口の約3割、クルド人はイラク人口の約16%の少数派であるが、シーア派に政権を支配され日頃の不満が爆発した形で、アルカイダと手を組んで反政府勢力が組織されている。
 
 オバマ大統領がシリアに派兵しなかった理由の一つは、シリアの反政府勢力にこのアルカイダ系イスラム組織が入っていたことが挙げられる。今回米国がどう出るかが注目されているが、厭戦派で財政立て直しを強いられているオバマ大統領は、とりあえず空母ジョージ・ブッシュをペルシャ湾に移動するよう命令した。
 
 米エネルギー情報局(EIA)によれば、イラクは、サウジアラビア、ベネズエラ、カナダ、イランに次いで世界第五位の1415億バレルの原油確認埋蔵量(2013年1月)を持つ国であり、イラク北部油田地帯ではロシア企業により新規油田の開発が進められている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、石油輸出国機構(OPEC)の2019年までの増産能力の約6割を担うと予想されている。OPECの2014年5月のイラクの生産量は日量333万バレルで、サウジアラビアに次いでOPEC第二位、OPEC生産量の11%を占める。
 
 要するに世界の石油生産に大きな比重を占める石油大国の北部で内乱が起き、イラク北部にある3分の1に相当するイラクの石油生産に支障が起きるかもしれないということである。これに対しIEAはイラクの衝突がこれ以上広がらなければ、今のところはイラクからの原油供給拡大を直ちにリスクにさらすことはないかもしれないと述べている。
 イラクの油田が占拠された等との報道は現時点ではなく、まだ米軍機も空爆を行っていないので、事態は流動的であるが、今後石油価格や金の価格に影響を及ぼす可能性は否定できない。

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