裁定取引

 ファンドの建て玉の分析を書こうと思ったが、米商品先物取引委員会(CFTC)は政府閉鎖の後遺症からか先週金曜日までに公表しているのは10月22日の週までの建て玉であった。それを分析始めたらすぐに、これはその後大幅に変わっているという感じがしたので、分析を中止した。本来は翌29日のものが先週末に公表されているはずであるが、どうやら22日から29日までの間に大幅な建て玉の変化があったものと予感させられる。

 本日の株式会社コモディティーインテリジェンスの週刊経済指標で、グラフを載せてあるが、東京市場と米国市場の歪みが大きくなっている。金と原油は、東京市場が下がり過ぎであり、米国市場と為替の円安分を足したもの以上に下がっている。従って論理的には東京買いのニューヨーク売りが成立する。

 また逆にシカゴのトウモロコシとシカゴ大豆は大幅に下落しているが、東京市場はそれほどまでには下落していない。つまりこちらは東京農産物価格が高過ぎるかシカゴ市場が安すぎるということになる。

 具体的に数字で言えば、シカゴコーンは今年の1月4日に比べて11月1日は62.8、▲38.2%下落している。しかし、東京トウモロコシは94.9と▲6.1%しか下がっていない。その差は32.1%である。円安が有るからといっても、同期間の円安幅は12.0%である。つまり東京トウモロコシは、20.1%下がり切っていない。この場合は東京トウモロコシ売りのシカゴコーン買いが成立する。

 アービトラージ(裁定取引)は最も手軽に出来てリスクが少ない取引である。間違えてはいけないのは、東京を売るだけでは片手落ちであるということだ。裁定取引は2市場間の歪みを利益化する取引であり、一方だけを取引するのでは裁定にはならない。両市場同時に取引し、また反対売買も同時に行って利益化することを裁定取引という。決してシカゴで買ったものを東京で売るのではなく、シカゴ買いのシカゴ売り、東京売りの東京買いで、少なくともどちらかで利益が出て、余程運が悪くなければ股裂きに会うことはないという理論である。しかし、必ずしも絶対ではない。その昔LTCMというノーベル経済学賞を受賞した学者が創設したファンドは、理論的には絶対に勝てる取組みで股裂きに遭って沈没した。股裂きとは買った市場の価格が下がり、売った市場の価格が上がるという、理論的にはあり得ないことが起きることである。建て玉が自分の資金以内であれば、少々の間股裂きにあっても耐えられるが、大金で大きな建て玉をしていれば評価損失に耐えられない。

 金や原油はNY市場に比べて東京市場の方が下げ幅が大きい。NY金は▲20.3%下がっている。為替は12.0%円安であるので、東京金の理論値は▲8.3%である。ところが、東京金は89.5と▲10.5%安であるので、理論値よりも2.2%多く下がっている。約90円多い。しかし、だから東京金は割安なので買いだということは間違いである。正解は東京市場で東京金を買い同時にニューヨーク市場でNY金を売るという手続きが必要になる。買った東京金をニューヨークに持ち込むのではない。それぞれに理論値に近づくはずだという概念である。こうしたアービトラージを多くの人が仕掛けるために安い東京金価格は上がり、高いNY金価格は下がるだろうという憶測である。市場が発達し、流動性が増し、だれでもどこでも同じ画面で取引ができるようになりさえすれば、資金はひとつのブローカーに預けておいて、こうしたリスクの限定された裁定取引で収益を挙げる機会が増えるはずだ。

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