暴落した金価格の行方 その2

 これまでの金価格は、米国のサブプライムローン問題、中近東北アフリカのアラブの春、欧州債務危機、といった世界経済の不安や、それによる銀行倒産の可能性、あるいは戦争の危険性に対するセーフヘブンとして金が買われることにより上昇してきた。

 今年に入ってからの金価格の下落と、とどめを指すかのような先週の史上最大の金価格下落は、そうした社会不安、金融不安、地政学的リスクが少なくなったことから金の役割が縮小したために生じた価格の動きであると思われる。

 本当にそうした不安は解消したのだろうか?どこかに火種は残っていないだろうか?ボストン・マラソン爆破事件で一瞬テロかと思われたが、犯人が直ぐにつかまり米国の警察能力と監視体制が評価されている。

 ニューズウィーク紙では2つのリスクについて述べている。1つは北朝鮮が戦争を始めるかどうかである。これについて、米国の大統領は憲法で35歳以下は被選挙権が無いため金正恩のような若い指導者は現れないと述べているが、スイスに留学した若い金氏だからこそ、まったく逆の、超タカ派の瀬戸際政策を北朝鮮において過度に行わざるを得なくなっているようだと解説している。また、韓国と北朝鮮は非武装中立地帯をはさんで、日常的に軍事力を誇示し合っている。緊張状態の中で恐怖にさいなまされながら任務に就いている両軍兵士は、小規模な作戦や誤射などの事故でさえ、挑発行動と受け止める可能性が高い。そうなれば、応戦せざるを得なくなり、より大規模な対立に発展する恐れがあるという。一発の銃声から第一次世界大戦は始まった。

 また87歳のイタリア大統領が再選されたことに危惧を抱いている。ジョルジョ・ナポリターノ大統領の再選は異例で、長年再選に反対していた同大統領を担ぎださねばならなかったほど、イタリア保守勢力は弱体化し、イタリア政界の分裂が回復不能な状態にあることを浮き彫りにしたという。最も重要な政治勢力の1つで元コメディアンのベッペ・グリッロ氏が創設した政党「5つ星運動」はナポリターノ氏の再選について、主要政党が裏で手を握る古い政治手法が用いられたと批判した。それほど、争いが起きることは必至で、新政権が5年の任期を全うすることは難しそうだという。

 中国経済は、1~3月期は8%を回復するとの見通しであったが、結果は10~12月期の7.9%をも下回り7.7%と、4期連続の7%台成長となっている。Moody’sは中国の格付け見通しをAa3のPositiveからStableに引き下げた。地方政府債務の不透明性や、急拡大しているNon-Bank等の信用市場における潜在的リスクを指摘し、財政安定性への不安が高まったとの判断である。FT紙は、中国会計士協会のZhang Ke副会長が「地方政府の財務は管理不能」と述べ、債券発行の監査報告には一切署名しない姿勢を明らかにしたと報じている。時限爆弾の存在を同国の重鎮が認めたのは初めてだろう。

 PIMCOのBill Gross氏は、[金は下がったら買い]の姿勢を崩しておらず、Marc Faber氏は金のブル相場はまだ完結していないと語っている。だが、大半の投資家は、「金の過大評価が修正され始めた」と見ているようだ。米国経済が着実に回復しており、FRBが来年にもQE3を縮小ないし停止すると飲み方が強まっていることも、金売りに拍車を賭けている。

 一方で、来年1月末に任期を迎えるバーナンキFRB議長の後任候補のイエレンFRB副議長は、来年就任早々に、黒田異次元緩和以上の金融緩和策を打ち出すと予想するアナリストもいる。無論その時期までに米国労働指標等が改善しないことが前提であるが、イエレン女史はIMFでの講演で、低金利政策を持続すべきだとの持論を展開している。

 今回の金価格急落劇では、ヘッジファンドは参加していないことが先週のファンドの建玉明細で判明した。英国の貴金属ディーラーSharks Pixleyは、金急落はある一社による100トン規模の大量先物売りという特殊要因が引き起こし、それに300トン規模の先物売りが追随したことが原因だと述べている。市場には金価格上昇を嫌うFRBの陰謀説まで飛び出している。

 要するに現在は、金価格にとって、決め手に欠く状態にあるということである。北朝鮮が本当にミサイルを発射すれば、それなりの影響はあるであろう。様々な前兆が見られる富士山が爆発しても、たいへんなことになるだろう。しかし、そうした前兆が確実に起こるという、はっきりした根拠を持たねば、金価格が反騰するとは思えない。しばらくは様子見であろう。

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