暴落した金価格の行方

 先週末から今日の月曜日にかけて金市場はさんざんな展開をした。先週金曜日のNY金価格は、1560.3ドルで始まり、安値は1476ドル、終値は、▲58.9ドル安の1504.4ドルだった。キプロスに対するEUの支援条件でキプロスの保有する金13.9トンの4分の3を売却することが条件となっているとロイターがすっぱ抜いたことが主な要因である。キプロスの問題自体はたいしたことではないにもかかわらず、EUが今後各国への支援条件に、①預金課税、②預金者の負担に次いで、③政府保有金の売却を求めることが前例となるだろうという市場の読みである。

 折から、日本では100円間近まで迫った円安が、急きょ反転して、97円台まで円高となった。これは、日本債券市場の混乱と関係があるようだ。そのために、東京金市場は、NY金の下落と、円高というダブルパンチを受けて、4981円の始値から4592円の終値まで▲389円安(▲7.8%)という2011年9月26日の▲486円安(▲11.1%)以来、過去二番目に大きい一日の値下がりとなった。

 NY金価格については、見通しが不透明になっている。金を動かす要因が特に見当たらないためだ。欧州の債務危機は、日本からのジャパンマネーが緩和しているようだ。

 日本国債市場では混乱が続いている。長期金利が一時史上最低の0.315%に低下した後0.6%まで急騰して一週間で四度サーキットブレーカーが発動された。こうした国債市場の乱高下を受けて、主要生命保険会社の運用担当者は国債の購入を中止しているという。日本生命保険やかんぽ生命保険など国内生保43社は1月末で332兆円の総資産のうち、約44%にあたる146兆円を日本国債に振り向けている。保険金の支払いまでの期間が長期にわたる生保にとって、保険の平均契約期間に見合った10年債や20年債で運用するのが最もリスクが少ないとされているためだ。
 
 しかし、資金を国債ではなく、他の運用に回させるという黒田総裁の思惑通り、日本の資金は国債運用を離れて外債購入に走っているようだ。米国レイト等不動産投資債券や、フランス国債等欧州の国債が、日本企業が買いに来るという思惑で価格が上昇、利回りが低下している。

 これまで為替と債券市場はそれほど関係がなかったが、日本国債市場とドル円が相関し始めている。一つの根拠は日米の金利差だ。債券が売られると長期金利が上がる。米金利が一定なら日米の利回りの差は縮まり、円買い・ドル売りにつながりやすくなる。

 投資家心理の影響もうかがえる。通常なら投資家がリスク回避の姿勢を強めると、比較的安全な資産とされる円や日本国債は買われやすくなる。だが今は債券市場そのものが混乱に陥っているので、長期金利の上昇、債券価格の急落は、円買い・ドル売りの材料になっている。
 
 3つ目は債券先物は残存期間が7年程度の現物の利回りと連動する。日銀が買い取る国債の平均残存期間も7年。「先物が売られるのは緩和策が効いていないため」との思惑が働きやすく、円買いを招く要因になる。
 
 これらの債券市場に起因する円高ドル安が時々顔を表すことになる。

 それでは今後円高になるかと言えば、そうとは思えない。米国は。シェールオイル革命により原油生産の増加、原油輸入の減少、石油製品や天然ガスの輸出等により貿易赤字が解消するだろう。財政赤字も共和党の厳しい財政正常化要求により、徐々に米国の財政赤字は改善の方向にあり日本の財政赤字との格差は広がるだろう。
 つまりドルは高くなり、円は安くなるだろう。

 金価格の結論として、ドルベースではそれほど上昇しないかもしれない。しかし、今日はたまたま円高で安くなったとしても、為替の基調は円安で、今後円ベースの金価格は高くなると思われる。
 
 もっと言えば、金だけでなく、円安を誘導している黒田異次元緩和は、全ての商品価格を上げていくだろう。

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