穀物価格は高くても売ってはならない。

大豆とトウモロコシなど穀物価格高騰が一般新聞やテレビで放映されるようになっている。
通常そこまでニュースが広まると、相場はほぼ天井をつけるが、今回の場合は別である。

これは1900年代のパラジウム騒動を思い起こさせる。当時商社でプラチナの世界最大のディーラーであった私は、ロシアと南アに日参してパラジウムの安定供給を確保し、部下の貴金属ディーラーは、売りがあればすべてを買い漁った。先物取引は価格をヘッジできる機能をもっているために、現物が欲しい場合は、やみくもに買えばよい。価格のことは考える必要はない。

とにかく顧客が、当時は自動車メーカーと半導体メーカーであったが、パラジウムを当時の使用量の5倍必要だという。全社が5倍供給を受けたら、一社だけで世界のパラジウムを消費しつくす勢いであった。物さえあれば売れたので、現物はとにかく買いまくりった。

ロシアに行ったら、ロシアマフィアが良いソースがあるというので、私は現物を机の上に置いていただければいくらでも買う、値段に糸目はつけないと言った。ロシアはパラジウムの約6割を生産する国で、共産主義から離脱して以来輸出品の利権は争奪戦になっていた。ロシアマフィアが良いソースを持つことは十分考えられた。ただ、前金だけは出さないようにして、現物を机の上に置いてくれと主張し続けた。

米国でもタイガーファンドがパラジウムを買占めしていたので、日本に招き帝国ホテルで朝食をとりながら売ってくれと交渉した。タイガーファンドはのちにつぶれることになるが、この当時は飛ぶ鳥を落とす勢いで、10年かけて買い占めたので10年かけて売るとうそぶいていた。

そんなとき、東京工業品取引所で売りが出た。商品取引会社が高過ぎるというので、空売りしたのだ。私はこれは実物を伴わないので、見送ったが、それを買ってスイスで売った商社もあった。しかし、スイスは現物市場である。物を受け渡さねばならない。その商社は私のところに来てパラジウムのリースを申し込んだ。リース料はうなぎのぼりに上昇し、リースレートは月に100%を超えた。それでも借りにくる商社があったからだ。

その後何が起きたかというと、市場で空売りした人たちはことごとく追証に追いまくられ資産をなくした。価格はとめどもなく上がったからだ。のちに商社が価格を釣り上げたと訴訟を起こした人たちもいたが、価格は需給で決まるので、商社が買い占めて価格が上がったわけではない。買っても買っても自動車会社の触媒需要や、当時売り出されたばかりのハンディカムなどの携帯電気製品用のパラジウムコンデンサーが売れに売れて、パラジウムは足りなかったのだ。

そうした状況では、空売りしてはならない。

今の大豆とトウモロコシがそれである。チャート的に言うとこれまでになかった領域に入り込んでいる。しかし、物がないときはどこまででも上がる。時々ファンドが手じまい売りして下がるが、多くの人がその下げを待ち受けていて、買うため以前よりもっと高くなる。こうした下げを狙ってはならない。けがをするだけである。

本当の下げは、世界中で暴動が起こり、(2008年には世界30か国で食糧高騰に怒った市民が暴動を起こし、それがアラブの春へとつながっている)オバマ大統領が市場での売買規制をするときだ。それでも供給があった原油と違って食糧は、実際にないと買いが続く。今の状況はだれかが売り惜しみしているわけではないので、政府は取引規制をしにくく、価格はスカイロケットであろう。

大豆やトウモロコシの消費が減るか、代替品があるか、どこか米国以外で作られるかである。それは、早くて南米から新穀が出る来年春であろう。

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