オバマケア代替案廃案の意味するもの

先週末トランプ米大統領は、医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案を撤回し、早くも政権運営の大きな失点となった。このことが意味するものはいくつか挙げられる。

一つは、共和党保守派が財政赤字をかなり強硬に嫌っているということだ。

二つ目は、共和党の議員は、『この法案が通らないと来年の選挙であなたは議席を失う可能性がある』というトランプ大統領の脅しに屈しなかった。世論調査によれば、トランプ大統領の支持率は39%に下がっているという。共和党議員は、トランプ大統領の政策に反対しても、選挙民はそれをわかってくれるとの感触を持ち始めたようだ。

三つ目は、オバマケアを廃案にして医療費の支出を削減すれば、約1兆ドルの資金が浮くことになり、これを使って減税やインフラ投資の原資とするという共和党の思惑がはずれることになった。

四つ目は、日本経済新聞によれば、暫定予算が切れる4月末までに新予算案を可決しなければ政府機関の一部を閉鎖せねばならない事態に陥るという。それだけ政府の資金は枯渇しつつあるということだ。

最後に、Wall Street Journalによれば、トランプ大統領はこの3週間議員をホワイトハウスの会食に誘うなど彼なりの議員工作を行ったようである。その結果が民主党は全員反対、共和党からも15人程度の離反者が出るなど完全な敗北となった。これまで懸念された通り、トランプ大統領と議員との間の溝はほとんど埋まっていないことが明らかになった。

米国の場合、財政にかかわる問題はすべて議会の専決事項である。いくら大統領があれをしたい、これをしたいと述べても、お金が無ければできない。その財布の紐を握っているのが議会である。共和党と民主党の差は52対48でわずか4議席しかない。最も簡単な法案であったはずのオバマケアの廃止及び代替法案の可決ですら議員の賛同を得られなかったということは、更に財政赤字を大きくする減税やインフラ投資はとても資金が無くてできないだろう。

何等かの税収増を図るか、議員を説得して国債を発行するしか、トランプ政策の目玉の法案を成就することはできない。3月中旬に提出した予算教書においては、メキシコの壁の建設費用や軍事費の増額を、国務省の予算削減などで賄うとしているが、これらの政策を今後議会が素直に認めるとは思えない。仮にそうした政策が通ったとしても、経済には何ら恩恵は得られない。未だ減税やインフラ投資の話は予算上も述べられていない。トランプ大統領は一体何がしたいのだろうか。いや、何ができるのだろうか。

こうした米政権の迷走は世界経済に悪い影響を与え始めるだろう。株価は下落し、世界は混乱に巻き込まれる。そうした恐れは証券市場から資金を引き出して、セーフヘブンとしての金に資金を移動する動きに拍車をかけるだろう。

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