OPEC減産決議の効力

 OPECは8年振りの減産決議を実行し、原油価格は急騰している。ロシアのプーチン大統領は、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子とイランのハメネイ最高指導者及びロウハニ大統領との仲を取り持ち、イランは減産せずに増産を認めるというサウジアラビアの妥協を取り持った。またサウジアラビアはOPEC最大の▲49万バレルの減産を行い権威を示した。イラクは▲21万バレル、UAE▲14万バレル、クウェイト▲13万バレル、ベネズエラ▲10万バレル、アンゴラ▲8万バレル、アルジェリア▲5万バレル、カタールとエクアドルは▲3万バレル、ガボンが▲1万バレル、リビアとナイジェリアは免除され、インドネシアは会議から抜けている。イランは+9万バレルの増産が認められている。

 減産するのは2017年1月から6ヵ月間であり、減産幅は厳密には117万バレル弱であるが、これはロシア等非OPEC諸国が▲60万バレルの減産を行うことが条件となっている。

 OPEC発行のOIL MARKET REPORT11月号によれば、2017年の原油需要予想は日量9,555万バレル、非OPECの供給量予想は日量6,286万バレル、OPECに必要とされる原油の生産量は需要量から非OPECの供給量を差し引いた日量3,269万バレルである。ところが、10月のOPECの実際の生産量は日量3,364万バレルであるため原油需給は日量95万バレルの供給過剰であった。これに対し、今回の減産でOPECの生産量が日量3,260万バレルに減少すれば、原油需給は日量9万バレルの供給不足となることになる。そうなれば、増加している原油在庫は減少に転じる計算となる。これに非OPEC諸国が日量60万バレルの減産を行えば、大きく原油在庫は減ることになる。

 以上は机上の計算であるが、これにはいくつかの変数がある。まず一つ目は、米国のシェールオイル稼働リグが増えていることが挙げられる。米国の石油掘削リグ数は2014年10月10日1609基と過去最大となったが、2014年秋からの原油価格下落に伴い稼働リグ数は減少してきた。

 しかし、今年5月27日の316基を底にして、原油価格の反発と共に稼働リグ数は増加し始め、12月2日時点では477基になっている。5月に比べて+161基の増加である。5月以来の27週間で前週からリグ数が減った週はわずかに2週しかない。2014年のピークから効率の悪いリグを廃棄して新しい生産性の高いリグを装置している。それだけ米国の石油生産コストは下がっていると言えよう。米国の企業はそれぞれ民間企業であり、OPECのような統制は取れていない。収益があれば、生産を拡大するのは資本主義の原理であろう。従ってOPECやロシアが減産して上昇した価格の果実を真っ先に享受するのは米国の石油企業であろう。

 12月10日にモスクワでOPEC諸国と非OPEC諸国の会合が開催される予定で、カザフスタンは参加を表明している。OPECは非OPEC諸国が日量60万バレルの減産をすることを条件としているが、果たして各論となると果たしてそれが可能であろうか。

 サウジアラビアの場合は、サウジアラムコの株式公開で1000億ドル規模の臨時収入が見込まれている。またムハンマド副皇太子が主導する経済改革案「ビジョン2030」は、(1)30年までに国内総生産(GDP)に占める民間部門の比率を40%から65%に引き上げる(2)石油以外の財政収入を6倍超に増やす――といった野心的な数値目標を掲げ、石油依存からの脱却と対外投資収益の拡大をめざす構想であるため、比較的原油減産の政策が打ちやすい環境にある。しかし、原油収入が国家収入の大半を占める産油国ではそうはいかないお家の事情がある。こうしたことは、OPEC諸国が減産を決議したからといって、今後それが守られるかどうかについては保証の限りではない。裏切られたときの反動安は想定しておくべきだろう。
 

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