スイスの金を守るイニシアチブ

 NY金価格は先週末24.1ドル高と大きく反発した。スイスにおいて11月30日スイス中銀が資産の5分の1、20%を金準備保有することを義務付ける国民投票が行われるためである。
 スイスの金保有量は現在1040トンで世界第7位、スイス中銀の資産の8%であり、義務付けられた割合を満たすためにはスイス中央銀行は、5年以内に金を少なくとも1500トン買い増す必要があるとアナリストは推計している。これによってスイスの金準備が2500トンを越え、米国、ドイツに次世界第3位となる可能性がある。国民一人当たりの金保有量では128グラムとなり、これは国家が保有する金の量だけであり、家庭で保管されている金地金や金貨は入らない。ドイツは42グラム、イタリアは40グラム、フランスが28グラム、アメリカは26グラムとスイスの128グラムは他国を大きく上回っている。

 戦後、スイスは諸外国とは異なり、国の復興資金を金でまかなう必要がなかった。安定した経済力と財政力の強さから、スイス国立銀行は金準備の量をさらに増やすことに成功。1945年には1,194トンだった金準備は、20年後の1965年に2,703トンにまで増加している。

 70年代に国際通貨基金(IMF)が取り決めた協定により、自国の通貨での金の公定価格制が、大半の国で廃止され、金は国際通貨制度の中でその歴史的な意味を失った。しかしスイスはその後も金への投資を続けた。1999年に行われた連邦憲法改正に伴い、やっとスイスは金の束縛から解放されることになる。憲法改正後、スイス国立銀行は初めて金準備の一部売却を許された。それまで金準備は、神聖不可侵とされていた。

 その後、金準備の一部を売却すべきだと政界のあらゆるサイドから圧力が掛かった。もはや金信仰は時代錯誤だと思われるようになっていた。インフレの不安要因もない中、金の価格は過去20年来、下降の一途をたどった。もちろん利息など全く付かない。スイスは何の利益も生み出さないお宝を後生大事に抱えているのでは、と疑問を持つ人も多かった。
 その結果、1999年にスイス政府と連邦議会はスイスが保有する金準備の半分以上を放出すると決定。金が既に国内の通貨政策の中での役割を失ったかのように思われたからだ。2000年~05年、そして2007年~09年にスイス国立銀行は1,550トンもの金を売却した。初回の売却は過去数十年間で金の価格が最も低い時点での出来事だった。そして、スイス国立銀行に残された金はわずか1,040トンとなった。

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